パース(透視図法)には、
一点透視図法、二点透視図法、三点透視図法の3種類があります。
この3種類のパース(透視図法)の違いを理解することは、
絵やイラストを描く上でとても重要です。
とはいっても、
・一点透視、二点透視、三点透視の違いがいまいちよく分からない
・何が違うの?
という部分が分からない方も多いのではないでしょうか?
実際、僕もパース(透視図法)を初めて知ったのが中学生の美術の授業でしたが、
この3種類の違いが全く理解できませんでした。
しかし、その後パース(透視図法)を勉強を進めていくうちに、
だんだんとその違いが分かってきました。
そこで、当時の僕のように
・一点透視、二点透視、三点透視の違いがよく分からない
・違いについて分かりやすく知りたい!
と思っている方に対して、
最近パース(透視図法)を勉強し始めたばかりの初心者の方でも分かるように、
丁寧に分かりやすく解説していきます。
目次
1 一般的な一点透視図法、二点透視図法、三点透視図法の違いの説明
一般的な一点透視、二点透視、三点透視の違いをまとめてみました。
大体このような感じだと思います。
・一点透視図法
1つの消失点(VP)で描くのが、一点透視図法
・二点透視図法
2つの消失点(VP)で描くのが、二点透視図法
・三点透視図法
3つの消失点(VP)で描くのが、三点透視図法
僕が中学校の美術の授業で習った感じでいくと、
一点透視、二点透視、三点透視の違いの説明は大体このような感じでした。
でも、これって
あー、そうなんだ。ってくらいで、よく分かりませんよね?
僕は全く分かりませんでした。
消失点(VP)が1つだから、一点透視、
消失点(VP)が2つだから、二点透視。と言われても
イメージしにくいというか、実感が湧きにくいと思います。
ということで、
実際に箱を使って、一点透視、二点透視、三点透視の違いを実感してみましょう。
2 一点透視と二点透視の違いは、箱を回転させたときの見え方の違い
まず、一点透視と二点透視の違いですが、
これは物を見るときの見方、見え方による違いです。
(正しい表現かは分かりませんが)
といってもよく分からないと思うので、実際に体感してみましょう。
一点透視と二点透視の違い 大体、箱を真正面から見ると一点透視
箱を用意してください。
立方体の箱が無かったので、僕は直方体の箱でやります。
では、この箱を自分の目の高さ付近に持ってきて、
真正面から見てみてください。
どんな感じで見えますか?
ただの正方形や長方形に見えると思います。
こんな感じですね。
でも、これでは少し分かりにくいので、
箱を自分の目の高さより少し下に、そのままスライドしてみてください。
そうすると、
今、箱の上面が少し見えると思いますが、
この箱の上面はどんな感じで見えていますか?
このように奥に行くにつれて、幅が狭くなっていくように見えませんか?
パース(透視図法)では、
これを「パースがつく」とか言うと思いますが、
この箱の上面の左右の2辺をこの先にずーっと伸ばしていくと、
やがて1つの点に収束するように見えますよね。
この収束する点が、いわゆる消失点(VP)です。
消失点が1つ見つかったね!
他にはあるかな?
ということで、今この箱の上の面は奥に向かって収束することは分かりました。
では、他に収束する、パースがついているところはないでしょうか?
目の高さ付近にあるこの状態では、正面の面は、ほぼ正方形や長方形に見えているはずです。
パースがついてたら、正方形や長方形には見えないよね
ということは、今は奥行きの一点だけにパースがついている、収束していっているということになります。
つまり、これが一点透視の構図です。
ちなみに、消失点(VP)があるところには、アイレベル(EL)があるはずです。
アイレベル(EL)とは、「カメラの高さ」です。
では、この場合、アイレベル(EL)はどの高さにあるでしょうか?
それは、今この箱を見ている自分の目の高さです。
自分の目をカメラと考えると分かりやすいと思います。
どの高さにカメラが置いてあるか、自分の目のレンズがあるかを意識してね!
今、自分が見ている目の高さ。つまりそれがアイレベル(EL)であって、
そこに消失点(VP)があります。
一点透視と二点透視の違い 箱を真正面から回転して見るのが、二点透視
では箱を自分の目の高さに持ってきて真正面から見てみてください。
これは先程と同じで、一点透視です。
箱の中が見えないので、よく分かりませんが、
直方体の場合、今こんな状態になっているはずです。
ではこの箱を顔に近づけて、時計周りに回転させてみましょう。
分かりやすいように片目で見てください。
顔に近づけるとより分かりやすくなるよ!
そうすると、今まで見えなかった右側の側面が薄く見えてくると思います。
この右側の側面は、今どんな感じで見えているでしょうか?
この面も奥に向かって収束していっているように見えますね。
パースがついています。
こんな感じで見えているはずです。
そして、収束する点、つまり消失点(VP)はかなり近いところにありそうです。
この消失点(VP)があるところには、アイレベル(EL)があります。
つまり、今この箱を見ている自分の目の高さ(目のレンズの高さ、カメラの高さ)です。
では、正面の面はどのように見えていますか?
先程まで、正方形や長方形に見えていたのが、
今は少しだけ左側に向かってパースがついているように見えるはずです。
収束する点つまり、消失点(VP)はどこにあるでしょうか?
右の側面に比べて、少し遠くにありそうですね。
消失点(VP)があるところには、アイレベル(EL)があります。
そのアイレベル(EL)はもちろん、今この箱を見ている自分の目の高さです。
ということで、
今、2つの消失点(VP)が見つかりました。
今、アイレベル(カメラの高さ、この場合は自分の目の高さ)付近で見ているので、
立方体や直方体の縦の辺は上や下に収束していない、ほとんどパースがついていないと思います。
これが、二点透視の構図です。
では、さらに時計回りに回転させていきましょう。
そうすると、右側の側面がかなり見えてきます。
右の消失点(VP)は先程より遠くなりました。
では正面の面はどうなったかというと、
より収束の度合い、パースがきつくなり、消失点(VP)がより近くなりました。
この状態も2つの消失点(VP)があるので、二点透視です。
目の高さ、アイレベル(EL)付近で見ているので、
上にも下にも収束していない、ほとんどパースはついていないと思います。
この状態からずーっと回転させていくと、
あるところで奥行きにだけしか、収束していかない、パースがつかない状態になります。
こんな感じです。
これは、一点透視ですね。
箱なので中が見えないので、分かりにくいですが、
このように、スケルトンにすると分かりやすいです。
奥行きのみ、収束していっている、パースがついています。
この状態から少し回転していくと、再び右側の側面が薄く見え始め、
正方形や長方形に見えていた面にパースがゆるくつき始め、
再び二点透視の構図になっていきます。
さて、これらから何が分かるかというと、
一点透視と二点透視の違いは、
箱をただアイレベル(EL)付近で、クルクル回転させたときの見え方による違いという感じです。
クルクル回転していくなかで、一瞬だけ奥行きだけに収束していく、パースがつく一点透視が現れ、
再び二点透視になっていく。
それだけです。
ほとんど二点透視だけど、一瞬だけ一点透視になるときがあるという感じです。
一点透視、二点透視の違いをまとめると
ここまで一点透視と二点透視を実際に箱を使って見てきましたが、
今度はこれを簡潔に図でまとめてみます。
先程見た感じを上から見た図(平面図・上面図)にすると、
一点透視と二点透視の違いがより理解しやすいかなと思います。
・一点透視
一点透視はこういう感じです。
これは透視図法(パース)の平面図(上面図)です。
PPとは、ピクチャープレーンと言って、ガラスや透明な板のことです。
箱の前にこのPP(ピクチャープレーン)を持ってきて、箱にぴったりくっつけます。
そして、このPP(ピクチャープレーン)越しに見えたまま描いたのを透視図と言います。
その透視図がよく目にするこれです。
・一点透視の特徴
奥行きにのみ、収束する、パースがつく
横の線は平行、縦の線(高さの線)は垂直
・二点透視
二点透視はこんな感じです。
縦の線(高さの線)以外の線が収束、パースがつく
縦の線(高さの線)は垂直
一点透視と二点透視の共通点は、縦(高さの線)にパースがつかないことだね!
3 一点透視、二点透視と三点透視の違い
一点透視と二点透視の違いは分かりましたが、
では三点透視との違いは何なのでしょうか?
三点透視は先程の二点透視の状況を応用すれば作れます。
ではやってみましょう。
箱を目の高さに持ってきます。
そして、なるべく顔に近づけて片目で見てみてください。
真正面から見れば、一点透視。
その状態から回転させると二点透視でしたね。
これが一点透視です。
そして、これが二点透視ですね。
では、この二点透視の状態から上にぐーっと持ち上げて見上げてみましょう。
そうすると、縦の線(高さの線)に上向きにパースがついて、
上に収束していくように見えるはずです。
今までは垂直に見えていた縦の線(高さの線)が斜めに見えると思います。
上に向かって幅が狭くなっているね
この縦の線(高さの線)をずーっと伸ばしといくと、やがて1つの点に収束していきます。
それが3つ目の消失点(VP)です。
そしてこれが三点透視の構図です。
3つ目の消失点(VP)は、アイレベル(EL)上にはないね
では、見下ろしたバージョンもやってみましょう。
二点透視の状態から、自分の目の高さより下に箱をスライドします。
すると今度は下向きに縦の線(高さの線)が斜めになって収束していくように見えるはずです。
消失点はこんな感じになります。
3つ目の消失点(VP)はアイレベル(EL)上にはないね
この二点透視の状態から上や下に箱を移動して、
見上げたり、見下ろしたりした状態が三点透視です。
ということで、
改めて最初の一点透視、二点透視、三点透視の説明を見ると、
少ししっくりくるようになったかと思います。
最後にそれぞれの違いをまとめてみました。
・一点透視
大体、真正面から箱を見たとき
奥行きだけにパースがつくので、消失点(VP)は1つ
縦の線は垂直、横の線は平行
・二点透視
一点透視の状態から箱を回転して見た状態
縦の線(高さの線)以外にパースがつくので、消失点(VP)は2つ
縦の線(高さの線)は垂直
・三点透視
二点透視の状態から箱を上や下にスライドして、見上げたり見下ろした状態
二点透視の状態に上向きあるいは下向きのパースが追加され、
結果的に消失点(VP)が3つになる
4 一点透視、二点透視、三点透視を理解するのにおすすめの本
最後に、実際に僕が使っていて、
一点透視、二点透視、三点透視を理解するのにおすすめの本を2冊紹介します。
まず、1冊目が「風景デッサンの基本」です。
この本は透視図法を使って、一点透視や二点透視、三点透視がどういうものかを理解していくというものです。
とても分かりやすいので、初心者の方におすすめです。
2冊目が「パース塾」です。
パース(透視図法)の定番的な本です。
とても分かりやすくて、初心者の方におすすめです。
まとめ:パース(透視図法) 一点透視、二点透視、三点透視の違い
消失点(VP)が1個だから一点透視、2個だから二点透視…みたいな感じで、
事実だけでは、なかなか理解するのは僕は難しいと感じます。
でも、実際に箱を使ってやってみると
意外とすんなり理解できるんじゃないかなと思います。
おわり
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