パース(透視図法)の種類の中に、一点透視図法があります。
絵やイラストを勉強している方や、最近パース(透視図法)を勉強し始めた方も
一度は見聞きしたことがあるのではないでしょうか?
しかし、
・一点透視図法ってなに? どういう意味なの?
・どういう仕組みなの?
という部分が分からない方も多いのではないでしょうか?
実際、僕も中学校の美術の授業で初めてパース(透視図法)を知ったときに
一点透視図法が何なのか、全く分かりませんでした。
しかし、
その後、パース(透視図法)を勉強していく中で、少しずつ分かってきました。
そこで、当時の僕のように
・一点透視図法ってどういうものなの? どういう意味?
・分かりやすく知りたい!
と思っている方に対して、
最近パース(透視図法)を勉強し始めたばかりの初心者の方でも分かるように、
丁寧に分かりやすく解説していきます。
目次
1 一点透視とは 概要
まず、一点透視図法がどのようなものかを簡単にまとめてみました。
一点透視図法と言えば、大体こんな感じですよね。
消失点(VP)が1つなので、一点透視図法と言われています。
縦(高さ)の辺は、アイレベル(EL)に対して垂直、
横の辺は、アイレベル(EL)に対して平行に描きます。
奥行きだけに、パース(遠近感)がつきます。
(消失点(VP)に収束していく感じをパースがつくと言います)
これが一点透視図法の構図です。
一点透視図法の特徴をまとめると、こんな感じです。
・消失点(VP)が1個だから一点透視、奥行きだけにパースがつく
・縦(高さ)の線はアイレベル(EL)に対して垂直
・横の線はアイレベル(EL)に対して平行
とは言っても、あまり実感が湧きませんよね。
僕は消失点(VP)が1つだから、一点透視と言われてもよく分かりませんでしたし、
一点透視の特徴がいまいちよく理解できませんでした。
ということで、一点透視図法がどういうものか、
箱を使って確認してみたいと思います。
僕は、箱を使ってみることで、
一点透視がなんとなく理解できるようになりました。
箱を使ってやってみると、一点透視図法について理解が深まるかもしれません。
2 箱を使って、一点透視図法を体感・確認してみよう
では、実際に箱を使って一点透視を体感、確認してみましょう!
箱を用意してください。
僕は立方体の箱が無かったので、直方体の箱にします。
①箱を目の高さに持ってきて、真正面から見る
まず箱を自分の目の高さ付近に持ってきて、真正面から見てみてください。
片目で見てみてください。
そうすると、こんな感じで見えると思います。
箱を自分の目の高さ付近に持ってきて、真正面から見ると、
ただの正方形や長方形に見えますね。
実はこれは、一点透視の状態です。
今箱なので、中が分かりませんが、
これをスケルトン、透明にすると、今こんな感じで見えています。
奥行きの線をそのまま、ずーっと奥に伸ばしていくと、
やがて1つの点に収束していくのがなんとなく分かるかと思います。
この点が消失点(VP)です。
消失点(VP)が1つ見つかったね!
さて、奥行きに消失点(VP)が見つかり、
パースがつくことは分かりましたが、他の部分はどうでしょうか?
今、自分の目の高さ付近で見ているので、
縦方向(上下方向)にパースはついておらず、縦(高さ)の線は垂直です。
横の線も、箱を真正面から見ており、自分に対して平行なので、
パースはついていません。
なので、横の線は平行ですね。
これが、一点透視図法の構図です。
奥行きの一点にしかパースはついていません。
さて、消失点(VP)に少し触れておきます。
この消失点(VP)ですが、消失点(VP)があるところには、アイレベル(EL)があります。
アイレベル(EL)とは、カメラの高さです。
では、このアイレベル(EL)は今、どの高さにあるでしょうか?
それは、今この箱を見ている自分の目の高さです。
アイレベル(EL)は、カメラの高さなので、
この場合は、自分の目のレンズと考えると良いかもしれません。
どこにカメラを置いて、この箱を撮影しているかを考えると分かりやすいと思います。
イメージはこんな感じです。
側面図とは、横から見た感じです。
平面図(上面図)は、上から見た感じです。
箱の上らへんにアイレベル(EL)があるよ。
箱は自分に対して真正面!
②箱を正面から少し見下ろしてみる
では、先程と同じように箱を目の高さ付近に持ってきて、真正面から箱を見ます。
そしたら、その状態から箱を少し下に動かしてみましょう。
そのまま下にスライドします。
そうすると、こんな感じで見えると思います。
片目で見てね!
これは、先程よりも分かりやすいですね。
箱の上面が薄い台形に見えています。
しかし、この箱を真上から見ると、ただの長方形です。
でも、今パースがついているので、薄い台形に見えています。
この場合も箱の上面の左右の2辺をそのまま奥に伸ばしていくと
やがて1つの点に収束します。
その点が消失点(VP)です。
下の面の左右の2辺も、上の面と平行なので、
パースがついて、同じ消失点(VP)に向かいます。
消失点(VP)が1つ見つかったね!
では、他にパースがついているところはないでしょうか?
今、少し見下ろしている感じなので、箱はアイレベル(EL)に近い状態です。
なので、そこまで縦方向にパースはついていないと思います。
よってこの場合、縦の線は垂直と考えて良さそうです。
あまり見下ろすと、下向きにパースがついてしまうので厳密に言えば、一点透視ではなくなります。
では、横の線はどうでしょうか?
横の線も今、真正面から見ているので、
自分に対して平行で、パースはついていません。
なので、横の線は平行です。
ということで、
パースがついているのは、奥行きの一点だけということで、
この構図も一点透視です。
さて、消失点(VP)があるところには、アイレベル(EL)があります。
アイレベル(EL)は、カメラの高さで、
どの高さにカメラを置いて撮影しているのかを考えます。
この場合も、今この箱を見ている自分の目の高さですね。
先程は、アイレベル(EL)が箱の真ん中付近にあったので、
箱の上面が見えませんでしたが、
今回はアイレベル(EL)の位置が箱よりも高い、
つまり、見下ろしているので、箱の上面が見えています。
イメージとしてはこんな感じです。
自分の目の位置(アイレベル)が箱よりも高いから、箱の上面が見えてるんだね!
③真正面から少し横にスライドして見る
では、再び目の高さの位置に箱を持ってきて、真正面から見てください。
これは、一番最初に見た一点透視ですね。
では、この状態から箱を少し右にスライドして見てみましょう。
片目で見てね!
(このとき平行にスライドします)
そうすると、こんな感じで見えると思います。
(持って撮影するの難しかったので、置いています)
左側の側面に注目してください。
上下の2辺が斜めになっていますね。
この辺をずーっと奥まで伸ばしていくと、やがて1つの点に収束していきそうです。
そこには消失点(VP)があります。
今、1つ消失点が見つかりました。
では、他にパースがついている部分はないでしょうか?
どっかないかな…
今、アイレベル(EL)に近いところで見ているので、
縦方向にパースはほとんどついておらず、
縦の線はアイレベル(EL)に対して垂直と考えられます。
では、横の線はどうでしょうか?
横の線も真正面から見ていた状態から
箱をそのまま少し横にスライドしただけなので、自分に対して平行です。
よって横の線は平行です。
ということで、パースがついているのは、奥行き方向だけということで、
この構図も一点透視です。
イメージとしては、こんな感じです。
アイレベル(EL)は、箱の真ん中よりも少し上にあるね!
3 改めて 一点透視図法とは 特徴・仕組み・構造について
さて、これまで実際に箱を使って、
3つのパターンで一点透視図法の構図を見てきました。
ここで、一番最初に紹介した一点透視図法の特徴を思い出してください。
こんな感じでしたね。
・消失点(VP)が1個だから一点透視、奥行きだけにパースがつく
・縦(高さ)の線はアイレベル(EL)に対して垂直
・横の線はアイレベル(EL)に対して平行
最初はよく分からなかった、イメージしにくかったかと思いますが、
実際に箱を使って見てみると、少し理解が深まったのではないでしょうか?
改めて、実際に箱を使って見て分かったことを付け足して、
一点透視図法の特徴や仕組み、構造をまとめていきます。
一点透視図法とは
①消失点(VP)が1個、奥行きだけにパースがつく
②縦(高さ)の線はアイレベル(EL)に対して垂直
③横の線はアイレベル(EL)に対して平行
先程、箱を使って一点透視図法を見てきましたが、
3つのパターンのいずれも箱と自分(またはカメラ)が平行でした。
なので、③横の線はアイレベル(EL)に対して平行になるのです。
箱を回転させるなど、箱と自分(カメラ)が少しでも平行でなくなると、
これは一点透視ではなくなります。
また、3つのパターンのいずれも、自分の目の高さ付近、
つまりアイレベル(EL)付近で箱を見ていました。
アイレベル(EL)付近というのは、大体正面を見ています。
で、アイレベル(EL)付近を見ている、正面を見ているというのは、
見上げたり、見下ろしたりしていないということなので、
上や下にほとんどパースがつかないんです。
ほんの少しパースがつくことはあるけど、大抵無視できるよ!
なので、②縦(高さ)の線はアイレベル(EL)に対して垂直になるのです。
ということで、結果的に①奥行きの一点のみにパースがつくということになります。
4 一点透視を透視図で描いてみよう
それでは、最後に透視図を描いて一点透視を確認してみましょう。
透視図の詳しい描き方はこちらの記事を参照してください。
さて、先程見た3つのパターンのうち、
2番目の少し上から箱を見たケースを透視図にしてみたいと思います。
先程の状態を平面図(上面図)、側面図に描き込みます。
箱は幅を2センチ、奥行きを3.5センチ、高さを2センチにしています。
アイレベル(EL)は、2.5センチにしています。
側面図のSP(スタンディングポイント)からEP(アイポイント)までの幅です。
この平面図(上面図)と側面図をもとに透視図を作成すると、このようになります。
拡大します。
どうでしょうか? 実際に見たような感じになっているかと思います。
奥行きの線を奥に伸ばしていくと、ぶつかるところがあります。
これが消失点(VP)です。
消失点(VP)があるところには、アイレベル(EL)がありました。
側面図のSP(スタンディングポイント)からEP(アイポイント)までの幅が、アイレベル(EL)です。
消失点(VP)とアイレベル(EL)が大体同じ高さになっているはずです。
これで、消失点(VP)があるところには、アイレベル(EL)、
アイレベル(EL)があるところには、消失点(VP)があることが確認できました。
また、一点透視図法は、奥行きにのみパースがつきます。
縦(高さ)の線はアイレベル(EL)に対して垂直、
横の線はアイレベル(EL)に平行に描きますが、
これも透視図を描くことで確認できます。
ぜひ透視図を描いてみてね!
5 パース(透視図法)、一点透視図法の勉強におすすめの本
実際に僕が使っていて、
パース(透視図法)、一点透視図法の勉強におすすめの本を2冊紹介します。
まず、1冊目は「パース塾」です。
とても分かりやすく解説していて、初心者の方におすすめです。
2冊目が「風景デッサンの基本」です。
この本は、パース(透視図法)の原理から描き方まで丁寧に分かりやすく解説しています。
すごくおすすめの本です。
まとめ: パース(透視図法)の一点透視図法とは? 意味や仕組みを簡単にわかりやすく解説!
消失点(VP)が1個だから一点透視と言われても、なかなか理解するのは難しいと思いますが、
実際に箱を使って体感してみることで、少し理解が深まるのかなと思います。
おわり
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